少し時季外れの話題になりますが、お寺の年末年始についてお話させて頂きます。
お正月も終わり、どなた様も日常に戻り通常の暮らしが続いてらっしゃると存じます。
コロナの辛さを感じながらとは思いますが。
実はお寺、特に私の属しています東福寺は年末、年始から1月15日迄は行事が目白押しです。
年末の除夜の鐘、今年はコロナ感染防止の為に僧侶だけで勤めましたが普段は一般の皆さんもお越し頂きますので賑やかな行事になります。
1日は3回、2日と3日も一度ですが本山へ出向きお勤め致します。
それが終わりますと、今度は和韻の用意です。
和韻と申しますのは東福寺の管長さんが漢詩(七言絶句)を作ります。
そして、その作られた漢詩の韻に合わせ、私たち周りの25のお寺の和尚が漢詩を作り、管長さんへ提出いたし、見て頂くという行事です。
御存知のように漢詩は中国から伝わり、鎌倉、室町時代の五山文学を経て特に私たちの宗派、臨済宗で盛んになりました。
そういう因縁もあり臨済宗では漢詩を重く見ています。
しかも、お檀家さんがご不幸に会われ、ご葬儀という事態の時の引導。
よく言われます、引導を渡すといいますが、実際にお葬式の時には漢詩も含め、故人へ向けて花向けの言葉、引導を渡すのです。
そのためより重要とされています。
しかし乍ら、昔のお坊さん方は教養もあり、勉強をなさっておられたのでスラスラ作られましたが。
戦後生まれの私たちは辛いところがあります。
そのため、どのお寺の和尚も3日以降は15日の漢詩の披露へ向かい、作詩のご苦労をなさります。
そして、15日の発表が終わり、ほっとなさり、初めて正月となります。
ですので、私も15日を過ぎて、やっとゆっくり飲まさせて頂き、少しゆっくりできています。
ですので、少し季節外れのお話になりました。
息子二人も僧侶なので普段は会社勤めの為、遠方なのですがお正月は戻り、共に本山のお勤めに出ました。
今年はそのことを漢詩によみこんでみました。
興味のおありの方は吟味ください。
弟子帰来 倶祝正(弟子帰り着たり、共に正を祝す)
法衣新着 笑顔清(法衣新しく着、笑顔清し)
祭文粛々 無難果(祭文粛々と無難に果たす)
喜見壮姿 般若声(喜び見る壮姿、般若の声)
息子が帰ってきたことも嬉しく、仏教行事のお勤めをそれなりに努めている成長が嬉しかったので、それを読み込んでみました。
弟子(息子)が帰ってきたので一緒にお正月を祝いました。
新しい衣を着て、子供の笑顔がすがすがしいです。
祭文というお勤めの役を無事に果たしました。
見ている私はその息子の姿とお経の声に喜んでいます。
親バカかとも思いますが嬉しかったので。合掌
大本山東福寺塔頭 霊源院