霊源院には玄関が二か所あります。
裏玄関と玄関です。
私は主に裏玄関から日常、出入り致しております。
そして、親しい方は裏玄関からお声掛けいただき、気楽にお入りくださいます。
法事や水子供養の法要にお越しの皆さんは山門前の石の階段を登り、正面の玄関からお入り下さいます。
法事のお方はそのまま客殿へお上がりいただきますが、檀家さんや永代供養墓のご縁で親しくお付き合い頂いている皆さんとは玄関で立ち話の機会も多いです。
この玄関の建物は下の方は改築致しましたが大本の部分は江戸時代後期の建物となります。
玄関正面の屋根の下の飾り、懸魚(げぎょ)は最近新しく付け替えました。
客殿に飾ってあります古い懸魚(げぎょ)は江戸時代後期のものです。
丁度、大玄関前に立ち上を見上げて頂きましたら新しい懸魚がご覧いただけます。
玄関に入り右上へ視線を移していただきますと笠が三つございますが、網代笠と申します。
以前にお話し致しましたように禅宗の僧侶は、必ずどこかの修行道場で一定期間修行致さねば住職資格が得られません。
その道場へ入門致します時のグッズの一つが網代笠(あじろがさ)です。
町中で僧侶がほーと大きな声を唱えながら歩く、托鉢行、見たことのある方もおられると思います。
その時にも顔が見えぬよう被っています網代笠です。
修行僧は雲水と呼ばれますが、それは行雲流水の言葉からそう呼ばれています。
流れる水、行き交う雲のように一緒に留まらづに修行を致すとの意味からです。
道場での修行を終えた若い僧侶は自分のお寺に戻って法務を手伝いながら学びます。
最近では、大半がそこのお寺の子供です。
寺に道場から戻りました時、「ここへ笠を掛けなさい」と師匠に言われました。
その時に理由を教えて下さいました。
今は寺の住職になると、そこから別の場所へ行くことは稀です。
昔は行雲流水の如く自在に行脚(あんぎゃ)、修行に再度出かけることもあったのだといわれました。
その為、何時でも私は再行脚の覚悟がありますよということを示すために、どこの禅寺の玄関にも笠が掛けてあると教えられました。
三個、笠が並んでいますが(真ん中は私、左が長男、右が次男の笠です。
機会を見つけ子供二人にも笠を掛けてる重みを感じてもらい、お寺を守る覚悟の一助として肝に銘じてもらいたいものです。合掌