最近は法事を多くの皆さんがお寺にお越し下さり、お勤めになります。
お墓のご縁を頂いている方が多いことからと存じます。
お寺で致す法事は、法事の主催のお方がご自宅から、法事を勤める故人のお位牌、そして写真をお持ち下さいます。その位牌、写真を本堂の御本尊の前に祀り、年忌を勤めます。
そして、更に故人の位牌の前に、霊具膳(りょうぐぜん)をお寺が用意致し、お供えします。
その後、先ずは本堂で年忌回向を致し、引き続きお墓へ行き、墓前にてご回向を致します。
しかし、お寺ではなく、法事の主催のお方の自宅にて、故人の年忌法要を勤めることも、もちろんあります。
この時は、私は自分の袈裟、携帯用の焼香箱を持ってお家へ伺い、年忌を勤めます。
お家へ伺いますと、既に仏壇には花を始めとして、お供えが賑やかに供えられてあります。
そして、お寺と同じく、仏壇には「霊具膳」(りょうぐぜん)も供えられています。
さて、過日は長らくお付き合い、しかも近しくご縁を頂いているお家へ故人の年忌法要をお勤め致す為に伺いました。
仏壇の前に座り、鈴を鳴らし、始めようと致した時に、何か違和感を感じました。
そうです、御膳の箸が私の方にあるのです、つまり御膳の向きが逆に供えられていたのです。
私がお経を始めませんので、お家の方が気になさり、お声を掛けました。
私が「御膳の箸が私に向いているんです、私が頂戴致したら故人が怒りますよね」と申しあげますと、ご家族がにこやかに笑いながら、「本当だ、これではおじいちゃん、食べれないよね」と若いお子さんが言いますと、笑いが起こり和やかな場となりました。
勿論、うっかりなされただけですので、何も問題はありませんが、仏壇の前で和やかな空気の中で故人の法要を勤めることが出来ました。
これも、場を和やかに致す、故人が差し向けた功徳かも知れません。
霊供膳は字の通り、御霊に備える御膳です。
作るときは、出来る限り法要に合わせて作り、暖かい物をお供え致したいものです。
そして、年忌法要に限らず、故人の祥月命日、お盆、彼岸と機会を捉えお供え致したいものです。
さて、そのお膳の有り様、そして、向きです。
先ずは自分が食事を致す時と同じに箸を位牌の方へ向けて置きます。
この時、箸を「掛ける」と言いますが、御膳にペタンと箸を置くのではなく、故人が召し上がりやすいように、御膳の角に箸を掛けてあげます。
そして、故人から見て右に、「お味噌汁」、左に「ご飯」、真ん中に「壺」(暖かい汁と共に、焚いた具材、例えば、厚揚げ、湯葉等)、右上にお漬物、昆布の炊いたもの等、左に三種、或いは五種の炊き合わせ(高野豆腐、ニンジン、シイタケ、青いお豆、カボチャ等)を盛りつけます。
故人の好きであったものも是非、入れてあげたいですね。
何か不明な点がありましたら、お気軽に問い合わせ下さい。
そして、法事が終わり御膳を下げましたら、お供えの果物、菓子と共に可能な限り「御下がり」として食べて頂きたく思います。
コロナ以降、法事も家族、少人数でお勤めなさる事が増えました、致し方無い所も、もちろん有りますが、しかし、大事な法事に若い方々も参加頂く機会を作り、このような法事の時の作法もしっかりと伝えて行きたいものです。合掌