お葬式は言わずと知れた、亡き大事な故人を送り出す、残されたものが勤める大事な儀式です。最近は時代の要請、変化に伴い、お通夜をせずに故人をお送り致す、当日葬(葬儀屋さんが主導で作った名前ですが)、そして、故人をとにかく24時間の間、葬儀会館の一室で安置致し、儀式は一切せずに、火葬場へお送りいたし、荼毘に付す直葬。
更には、お身内の極めて近しい方々だけで、僧侶を伴いお送り致す家族葬。
此方も葬儀屋さんの造語ですが、すっかりと世間には認知され、市民権を得ています。
私が檀家さん、永代供養のお墓のご縁の皆さんからご依頼頂き、葬儀をさせて頂くときも、今回は「家族葬にて勤めます」とのお言葉をを頂くことは少しも珍しいことではありません。
しかし、お寺、僧侶にとって懇意のお方、深いご縁の皆様、ご縁をたまたま頂戴致した皆様の葬儀のご依頼を頂き、赴きます時は、それこそ、ご参集の皆さんの人数などに拘ったことは一度としてありません。
多くの御親戚、故人のご縁の皆さんが多く、故人とのお別れにお越しになれば、それは故人が繋げた縁の結果ですし、本当に家族だけの参列であっても、ご家族が大事な故人をお送り致す為に、おられるのですから、敢て、家族葬などと言わなくても、故人をお送り致す、大事な儀式「葬儀、告別式」であることは間違いないのです。
しかし、その名前に拘り、如何なものかと問いかけるのも、どうかと思い、最近は「家族葬」でと故人のお身内が申されました時は、言葉通りお受け致し、「大事な故人を、通夜、葬儀式にて共にお送り致しましょう」と申し上げ、葬儀式を勤めています。
そして、最近は大事なお方が病院でお亡くなりになることが殆どですので、ご家族の大事なお方がお亡くなりの時は、そこの病院へ出入りの葬儀屋さんがイニシアチブを取られ、葬儀、告別式、更には当日の初七日迄を差配なされることが殆どです。
引き続き、葬儀の場所も勢い、故人の自宅ではなく、葬儀会社の用意なされた、葬儀会館にて、致すことが10割に近い確率です。
もちろん、大事な故人を失われ、動揺なされているご家族には心強い葬儀屋さんであることは間違いありません。
寧ろ、そこに近しく接することが出来なくなった、本来は寺が先ず致さねばならぬことさえも葬儀屋さんがなされていることに強くお寺は反省せねばならぬのですが。
さて、今回40年近く、「月参り」でお世話になっておりました、本当に近しい檀家さんの奥さんが、本当に残念ですがお亡くなりになられ、息子さんからご葬儀のご依頼を頂きました。
長らくお世話になりました、故人の葬儀に関われることは先ずは、安堵の気持となりました。
心を込めてお送り致す覚悟でおりました時に、息子さんから、思わぬお言葉を頂きました。
「母の家でお送りの葬儀を致したく思っています」とおっしゃられました。
正直、故人の家からお送り致す葬儀式を致した記憶は、思い出せぬ程、昔となります。しかし、何とも嬉しく、通夜、葬儀、告別式、初七日と想いを込めて故人をお送り致すことが叶いました。
狭いご自宅ではありませんが、決して、びっくり致す程の広さのお家ではありません。
しかし乍ら、多くの御親戚が多くお越しになり、皆さん懇ろに故人へ向けてお手合わせなされておられました。
しかも、ご出棺の時には、向こう三軒両隣の皆さんが「平服」にて数珠を持ち、故人をお送りなされました。
大事な故人をお送り致す、原色の葬儀式にご縁を頂くことが出来ました喜びを感じますと共に、故人の息子さん、娘さんの母親への想いの深さを感じ、何とも暖かい葬儀式の経験となりました。合掌